65歳以上の約15%、85歳以上では4割以上を占めると言われ、医療・介護において大きな社会問題となっています。
ここで加齢による物忘れと認知症の大まかな相違点をまとめます。物忘れでは体験したことの一部を忘れてしまうので、食事であれば、食べたことは覚えているものの何を食べたのかを忘れてしまいます。
一方、認知症では体験したことのすべてを忘れてしまうので、食事をしたこと自体を忘れてしまいます。物忘れでは自分自身が忘れている自覚があるので思い出そうとし、ヒントがあれば思い出しますが、認知症では忘れている自覚がなく、ヒントがあっても思い出しません。
物忘れでは悪化することはなく日常生活に支障を認めることは少ないですが、認知症では悪化してしまい日常生活に支障を認めることが多いです。このような点が相違点であると考えられますが、判断しずらい点もあると思いますので、そこは医師にご相談ください。
認知症の中には外傷・感染・脳腫瘍・内分泌や代謝疾患など、それらの治療により治療可能な認知症と、そうではない認知症があります。
アルツハイマー型認知症が最も頻度が多く50~60%程度です。以降、血管性認知症(20~30%程度)・レビー小体型認知症(約20%)・前頭側頭型認知症(約2%)です。
・アルツハイマー型認知症:
認知症の中で最多であり、65歳以上の有病率は約1~3%で、年齢とともに増加し、女性に多い傾向があります。緩徐ではあるものの進行性の経過をたどります。
症状は著明な記憶障害・判断能力の低下・見当識障害・もの盗られ妄想・徘徊・介護拒否などがあります。記憶障害と言うのは忘れてしまうと言うことです。見当識障害というのは時間や季節・場所・人などがわからなくなってしまうことです。
介護をされる方は、怒ったり否定したりはせずに、うまく話を合わせて安心させてあげるようにしましょう。現在は完治させるような治療法はありませんが、進行を抑えたり症状を緩和させるような薬はあります。
アルツハイマー型認知症にはアミロイドという物質が原因であると考えられており、PETという検査法を応用してアミロイドイメージングという検査法が早期診断に有効ではないかと現在、研究が進められております。将来的には非常に有益な検査となる可能性があります。
・血管性認知症:
アルツハイマー型認知症について多く20~30%を占めます。男性に多いです。動脈硬化が原因となるような脳の血管の病気が原因となります。脳血管障害後、急激に発症することや、繰り返すごとに段階定期に進行することがあります。
アルツハイマー型認知症と混合していることもあります。症状は障害されている能力と残っている能力が混在していることがあり、「まだら認知症」と言われます。抑うつ・感情失禁・尿失禁・歩行障害などが認められ、アルツハイマー型認知症と異なり抑うつ傾向のことが多く、尿失禁・歩行障害は早期から認められることがあります。
血管性認知症の方は自分自身が認知症であることを理解できているため、介護をされる方はより配慮が必要となります。治療は高血圧・糖尿病・高脂血症などの動脈硬化の治療や禁煙などが重要となります。
・レビー小体型認知症:
アルツハイマー型認知症・血管性認知症について多く、男性に多いです。症状は特徴的なものは初期からみられる幻視とパーキンソン病様の症状が認められます。はっきりとしているときとそうでないときがあり、それを繰り返しながら進行していきます。
介護をされる方は幻視というのは本人には見えているものなので、決して否定しないようにしてあげてください。否定してしまうと馬鹿にされていると感じて、怒ったり暴力を振るったりすることもあります。根本的な治療法はなく、対症療法となります。
・前頭側頭型認知症:
前頭葉と側頭葉に萎縮を認め、他の認知症と異なり指定難病に認定されています。40~60代に発症することが多く、男女差はありません。約12,000人の患者さんがいます。
前頭葉が障害されるため、自己中心的な人格変化と反社会行動が特徴であり、記憶や日常生活動作などの障害は目立ちません。本人には病識がなく、介護をされる方が変化に気付いたとしても、本人に受診を促すことが容易ではありません。
その場合は介護をされる方が行政へ相談したり、御家族であれば受診をする場合もあります。治療は有効なものがなく、対症療法が中心となります。
ここまで主な認知症について述べましたが、認知症について不安がある方は、杉並区医師会のホームページをご覧になると、トップページの右側「医師会の活動内容」の中に「物忘れ相談医」という欄があります。
こちら そちらをご覧になると、専門的な講習を受けた「物忘れ相談医」の一覧があります。また、区内17カ所のケア24においても物忘れ相談を実施しております。そちらを参考にいつでも御相談ください。