よしひさ内科クリニック|一般内科、消化器内科、内視鏡内科

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糖尿病

■糖尿病とは?

   糖尿病とは膵臓から出るインスリンという血糖を下げるホルモンの働きが低下したために血糖がうまく利用できずに血糖が高くなっている病気です。その糖は尿中に排泄されてくるので糖尿病という名前がついています。ご存知の通り、糖尿病の方は非常に多く、日本人の5人に1人は糖尿病というぐらい人数が増えています。
糖尿病
  インスリンが足りない状態とインスリンがあっても効きが悪い場合、その両者の合併した状態があります。血糖値とインスリン値を計算式に入れることによって、HOMA-β・HOMA-IRという数値を調べることができます。HOMA-IRというのはインスリンの抵抗性を診る指標です。抵抗性というのはインスリンの効きの悪さを表します。

  1.6以下であれば正常、2.5以上であれば抵抗性があると判断します。つまりその場合はインスリンがあっても効きが悪い糖尿病ということとなります。HOMA-βというのはインスリンの分泌能を診る指標です。40未満であれば分泌低下、80以上であれば分泌亢進と判断します。40未満であればインスリンが足りないことによって起きている糖尿病ということとなります。また、80以上であり、HOMA-IRが2.5以上であれば抵抗性があるために、結果的にインスリンの分泌が過剰となっていると考えます。

 空腹時血糖値が126mg/dl以上、もしくは随時血糖値が200mg/dl以上、もしくはHbA1cが6.5%以上の場合は糖尿病が疑われますので、精密検査を受けることをお勧めします。

■糖尿病の種類

  糖尿病には1型糖尿病・2型糖尿病・その他のもの(遺伝子異常やステロイドによる糖尿病や妊娠糖尿病)があります。
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   1型糖尿病は糖尿病の約5%程度と少ないです。膵臓のインスリンを分泌しているβ細胞が破壊されてしまうことにより絶対的にインスリンが足りない状態となる病気です。細胞の破壊には80%程度が自己免疫の関与があります。

遺伝的な因子は高頻度ですが、家族歴は少ないです。他にウイルス感染が引き金となっていることもあります。インスリンの分泌はほとんど認められないため、インスリン注射が必要となります。そのため、以前はインスリン依存型糖尿病と呼ばれていました。体格は普通から痩せていることが多く、インスリンの抵抗性もみられません。

 2型糖尿病は日本人の糖尿病の95%を占め、1型糖尿病のインスリン依存型糖尿病に対して、以前はインスリン非依存型糖尿病と呼ばれていました。インスリンの分泌障害とインスリンの抵抗性の増加により高血糖となる病気です。1型に比べて家族歴は多く、それに加えて過食・運動不足・肥満・ストレスなどの環境因子が加わり発症します。75%は肥満体型であり、インスリンの抵抗性を認めます。

  中高年に多かったですが、近年は食事の変化により小児でもみられるようになってきてしまっています。もともと日本人を含むアジア人はインスリン分泌が少ないため、少し太ってしまいインスリン抵抗性が上がっただけで糖尿病を発症してしまうことが多かったです。

  しかし、最近では欧米人に多い、高度の肥満により抵抗性が著しく増大し、インスリン分泌が過剰となっている糖尿病が増えてきてしまっています。インスリン抵抗性の増加は肥満に伴う内臓脂肪の蓄積や脂肪肝により引き起こされます。

■糖尿病の症状について

  症状は1型糖尿病では急激に症状を認めることもありますが、2型糖尿病では多くは無症状です。進行してくると高血糖による症状が出てきます。高血糖に伴う症状は、多飲・多尿(よく飲んで尿が近い)・口渇(喉が渇く)・体重減少・易疲労感(疲れやすい)などがあります。できればこのような症状が認められる前のドックや健康診断で血糖値が高いあるいは高め(耐糖能障害)と言われた時点からの対策が大切です。

 糖尿病の怖いところは何といっても血管障害が出てくることです。合併症も大きな血管が障害を受けてくる動脈硬化によるものと細い血管が障害を受けてくる微小血管障害にわかれます。動脈硬化による合併症は心筋梗塞・狭心症などの虚血性心疾患、脳梗塞、手足の末梢動脈が詰まってしまったり(後に述べる神経障害とこの血流障害が合わさり足に変形・潰瘍・壊疽などの症状が起こすことがあり、足のケア(フットケア)が大切となります)します。

  微小血管障害は網膜症・腎症・神経症といった非常に有名が糖尿病の三大合併症が当てはまります。動脈硬化自体は糖尿病でない方であっても年齢とともに認められます。しかし、糖尿病の方はこの動脈硬化が非常に進みやすいのです。糖尿病でない方が動脈硬化による病気を発症するリスクと1とすると、耐糖能障害の方で2倍、糖尿病の方となると3~4倍になります。
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■三大合併症について

  少し三大合併症について触れます。

  一つ目は糖尿病性網膜症です。網膜症に限らず糖尿病の方は眼の病変を起こしやすく、白内障・緑内障なども起こしやすいです。糖尿病性網膜症は後天的な失明の原因の緑内障に次いで第二位となっています。年間で約3000人の方が眼の障害を患っておられます。

  初めは血管から点状の出血や白いシミなどが出てきます。その後、血管が完全に詰まってしまうと新しい血管(新生血管と言い、非常にもろい血管)が生えてきてそこに負担がかかると出血をして硝子体出血を起こしたり、それを繰り返すことにより網膜剥離や失明に至ってしまう病気です。このような硝子体出血が起こってこない限りはほぼ無症状であるため、糖尿病の方はしっかりと眼科を受診することも大切です。

  二つ目は糖尿病性腎症です。腎臓というのは何らかの理由で片方を失ったとしても、もう片方だけで生活が可能なほど、非常に予備力の高い臓器です。しかし、高血糖や高血圧が続いてしまうと徐々に腎臓の細い血管が障害を受けてきて、腎機能が落ちてきてしまいます。

  完全に機能がなくなってしまうと透析を行わなくてはなりません。新規に透析を始める方の第一番目の原因が糖尿病であり、年間約15000人の方が新たに透析を開始しておられます。

  三つ目は糖尿病性神経障害です。手足のしびれのような末梢感覚神経障害と自律神経障害があります。末梢神経障害が起こると手足のしびれのような感覚低下を認めてきて、進んでくると感覚が分からなくなってしまいます。そうなると手先・足先に怪我をしても気が付かずに、そこから感染を起こすと壊疽(腐ってしまうこと)を起こして、ひどいと切断などをせざるを得ない時もあります。

  自律神経障害では起立性低血圧(立ち眩み)や便秘などを起こしたり、低血糖による症状を感じなくなってしまったりします。これらの合併症、最初はほとんどが症状を認めません。しっかりと通院して主治医の先生と相談していくようにしてください。

■血糖コントロールの検査について

  血糖コントロールの検査として、HbA1c(ヘモグロビンA1c)・グリコアルブミン・1.5-AG(1.5アンヒドログルシトール)があります。HbA1cは貧血検査などで聞かれる血液中のヘモグロビンという蛋白質とブドウ糖が結合したもので、過去1~2か月の間の血糖値の平均を診ているものです。グリコアルブミンはアルブミンという蛋白質とブドウ糖が結合したもので、HbA1cと比べても回転が速く過去2~3週間の血糖値の平均を診ています。

  1.5-AGはブドウ糖と似た構造をしており、尿糖が出るようになってくると尿中に排泄されるようになり、他の指標とことなり数値が下がります。こちらも短期間の血糖コントロールの指標として用いられるとともに、食後高血糖の評価となります。ただし、現在使用されている尿中にブドウ糖を排泄することにより血糖値が下げる薬(SGLT2阻害薬と言います)を使用しているときには、血糖コントロールが良好であっても、1.5-AGは下がりますので、指標とはなり得ません。

  これらの中で最も頻繁に使用されているのがHbA1cです。この数値が6.5%以上であれば糖尿病と考えられ、治療中は先程述べた合併症予防を考えると7%未満にすることが望ましいと考えられております。ただし、65歳以上の方に関しては、使用している薬や他の合併症、その方の状態などにより一概に同じ数値が望ましいとは言い切れません。しかし、65歳未満の方に関してはこの数値であるとお考え下さい。

■治療について

  治療は食餌療法・運動療法・薬とあります。食事はまずは一日に必要なカロリーを計算します。標準体重は22×身長(m)×身長(m)で計算されます。例えば170cmの人であれば、22×1.7×1.7=63.58kgとなります。

  その標準体重に日常生活での活動度に合わせてカロリーを掛け算します。デスクワーク中心の軽労働であれは25~30kcal、立ち仕事が多い中間の労働であれば30~35kcal、力仕事などの重労働であれば35~40kcalを掛けます。

  例えば身長170cmの中間の労働の方であれば、標準体重が先程の計算式で63.58kgとなり、これに30~35kcalを掛け、1907.4~2225.3kcalとなります。このカロリーの50~60%が炭水化物となるように食事を摂ります。

  それに加えて一日に20g以上の食物繊維を摂るように促します。これが現在のガイドラインとなっております。一方で、糖尿病の食餌療法で炭水化物を抑えた食事をする考え方もあり、その患者さんに合わせた治療法を行っていくこととなります。運動の目安は一日に30分もしくは二日で60分と言われます。この時間ですが、原則的には連続運動と言われています。よくジョギング中に信号待ちで足踏みをしている人を見ることがあると思いますが、一度完全に立ち止まってしまうと0からのスタートとなりますのでご注意ください。
糖尿病
  薬による治療です。食餌療法・運動療法を行っても改善しない場合は薬を使用せざるを得ません。糖尿病のタイプにより使い分けていくこととなります。大きく分けて、インスリン抵抗性改善薬・インスリン分泌促進薬・糖吸収、排泄調整薬といった内服薬とインスリンの注射となります。インスリン抵抗性改善薬にはビグアナイド系とチアゾリジン誘導体の2系統があります。

  ビグアナイド系は肝臓で糖が作られてくるのを抑え、消化管からの糖の吸収を抑え、末梢組織でのインスリンの感受性を改善させます。インスリン抵抗性のある肥満の方に有効であり世界的には第一選択薬とされ、少なくとも体重増加の副作用はなく、場合によっては体重減少することもあります。頻度は少ないですが、乳酸アシドーシスという副作用があり、アルコールを多量に摂取する方には注意が必要です。

  チアゾリジン誘導体は骨格筋・肝臓でのインスリンの感受性を改善させます。体重増加に注意が必要であり、膀胱癌の発症リスクを増加させるという報告もあります。インスリン分泌促進薬にはスルホニルウレア剤・グリニド剤・DPP-4阻害剤・GLP-1受容体作働薬とあります。スルホニルウレア剤は飲み薬の中では最も強力な血糖降下作用があります。

  そのため低血糖に注意する必要があり、他の薬と併用している場合は特に注意が必要となります。また、体重増加の副作用もあります。グリニド剤は吸収が早いため短時間で血糖降下作用を示します。必ず食直前の服用が必要となります。DPP-4阻害剤とGLP-1受容体作働薬はインクレチン関連薬と呼ばれます。

  インクレチンとは食事摂取により小腸から分泌される消化管ホルモンであり、膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を促します。血糖値に依存してインスリン分泌を促すため、低血糖を起こしにくいです。DPP-4阻害剤は最も新しいインスリン分泌促進薬であり、血糖が高い時のみインスリン分泌を促進します。そのために他の薬剤と比べて、低血糖や体重増加の副作用が少ないです。

  GLP-1受容体作働薬はDPP-4阻害剤よりも効果は強く、食欲抑制・満腹感亢進・胃の運動の低下などの働きにより体重増加をきたしません。しかし、現在は内服薬はなく皮下注射薬しかありません。糖吸収、排泄調節薬にはαグルコシダーゼ阻害薬とSGLT2阻害薬があります。

  αグルコシダーゼ阻害薬は炭水化物を分解された二糖類をさらに分解していく酵素の働きを抑えることにより糖の吸収を遅らせる薬で食後高血糖を抑える働きがあります。必ず食直前に服用しなくてはならず、お腹が張ったり、おならが増えると言った副作用があります。低血糖の時に普通の飴などを摂っても分解されないため症状が改善されにくいです。

  SGLT2阻害剤は最も新しい糖尿病治療薬です。腎臓から糖の再吸収を抑える薬で、簡単に言えば、尿に糖を捨ててしまう薬です。単独で用いる限りは低血糖を起こしません。

  しかし、腎臓の働きが悪い人では効果が乏しく、尿に糖分が多く出ることから尿素感染症を起こしたり、尿量が多くなることから脱水傾向となることがあります。これらの薬を使用しても血糖値の改善が認められない場合はインスリン製剤を使用することとなります。インスリンは様々な種類があるため、その方に合わせて使用することとなります。

  このようにインスリンを含め、糖尿病の薬は非常に多くの種類があります。その方の糖尿病のタイプに合わせて薬を選択していくこととなりますが、何よりも食事療法・運動療法が基本であり、薬で血糖値が安定したからといってもしっかりと食事・運動は気を付けていかなくてはなりません。そしてそれを維持・継続していくことが非常に重要となります。
よしひさ内科|原田院長
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